2016年08月12日

【怪談】カップル

どうも!正宗です。

夏なので怪談でも。

苦手な方は読んでしまわないようご注意を。

それでは。


高校生の頃、地元の花火大会を当時の彼女と二人で観に行った時の帰り道。

さっき観た花火の話をしたり、お互いの腕やおでこをいきなりひっぱたいては「いや、蚊がさぁ(笑)」とか言ったりしながら田んぼに囲まれた田舎道をのんびり歩いていた。

人影もまばらになった夏の夕闇。

むわっとした生温い風が、どうにか汗が吹き出て来るのを抑えてくれていた。

ふと気がつくと、少し先にぼんやりと見える田んぼの縁の薄暗がりに、何かが沈みかけているのが見えた。

何だあれ?

田んぼに何か沈んでる...。

えっ嘘、もしかして人...?

バチンッ!!

「痛ぇっ!いやちょっと待ってちょっと待って!!」

「いやいや、蚊がね、ここにね(笑)」

「違うんだって、なんか田んぼに人が落ちてない?」

「えっ?」

顔を見合わせ小走りに駆け寄ってみる。

目を凝らして見てみると、そこには道端でたまに見かける、警察官の姿を摸したスピード出し過ぎの注意喚起をする看板が、半分田んぼに沈んでいた。

なんだ、看板か。

ホッとして肩の力が抜けた。

やたらリアルな人型の看板。

遠目から見るとホントに人っぽかったのでマジでビックリした。

「なんだ、看板か!アッハハ!」

不意に前の方から男の声がした。

「誰か田んぼに落ちてるかと思ったわ、ハッハッハ!」

見ると、前から男女のカップルが歩きながら近づいてくるところだった。

結構年上の大学生か社会人カップルのようで、男の方は酒でも入ってるのかやたら陽気にハッハッハ、ハッハッハと笑っていた。

女性の方は、男とはこれでもかというほど対照的だった。

その女性は赤い服を着ていて格好は派手なのに、髪はボサボサで終始無言でうつむいていて、こう言っては何だけどもの凄く陰気臭い。

うおぉ...なんか怖ぇ。

「兄ちゃん、その看板引き上げといてよ!ハハハ」

このカップル、温度差激しすぎ。

「いやぁ、ちょっとキツいッス」

あの埋まり方だと、多分田んぼの側に足を突っ込まないと上手く看板は引き上げられないだろう。

少なくとも片足は泥まみれになってしまう。

いくらなんでもそこまではやってられない。

「ま、人じゃなくて良かったな、ハハハ!」

「そうッスねー」

「じゃあな」

そう言ってそのカップルと別れた後。

「ねぇねぇ、あれ何話してたの?」

「はっ?何が?」

「いや、何かしゃべってたじゃん」

何を言ってるんだコイツは。

「何か、って(笑)めっちゃ目の前で聞いてたでしょ」

「聞こえないってあんなの!あの女の人、一人でブツブツブツブツ言ってて。何しゃべってるか全然分かんなかったよ」

瞬間、なんとも言えない嫌な感覚に包まれた。

女の方がしゃべってたって?

しかも一人で、ってどういう事だ?

彼女の目をマジマジと見つめる。

なんで俺があの女の人と話してたと思ってるんだ?

あれだけ目の前であの男が賑やかに話してたのに。

「女の人が?俺としゃべってたの?」

「え?うん...え?」

さっきよりも湿度の高い、どんよりとした生温い風が遠くから静かに吹いてきた。

...いや、そんな訳ないよね?

どうにかして打ち消したい疑問が頭の中を埋め尽くす。

...あれってカップルだったよね?

ドッと汗が噴き出してくる。

...男の人も、いたよね?

確かめたい。

でも確かめたくない。

もし『女の人しかいなかった』という答えが彼女から返ってきたら...。

その答えが事実として確定してしまう気がする。

ふと背後に気配を感じた。

気配はジッとこちらを見つめている。

うなじの毛が粟立つ。

『よう、ハハハ!』

今にもそんな声が背後から聞こえてきそうな気がする。

濃密な気配。

振り返れない。

確かめられない。

「よう」


「正宗くん」

恐る恐る振り返ってみる。

そこには、同じ部の将来の部長候補である荻野くんがいた。

一気に緊張がほぐれる。

フゥ、と聞こえないように小さく安堵のため息をつく。

「おぉ、オギー。何?花火?」

「あぁ。ゴメンな、追いついちまって(笑)」

「ん?」


「いやさぁ、遠くから見てたら誰もいない道でお前ら突然二人きりで立ち止まるからさぁ。気ぃ効かせて道戻ろうかと思っちまったよ(笑)」

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自由帳 - サムライEXP posted by 正宗 at 14:44 Thanks Reading!!
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