7月も終盤に入ってかなり暑くなってきたので、今日は怪談をお話しします。
苦手な方は今のうちにお引き取りを、、、
※この話はフィクションです。
これは私が体験した実話です。
過去の記事で、私はサパークラブというところで夜職をしていたことがある、と書いたことがありますが、これはその同じ店での話です。
サパークラブとは、ホストクラブとは違って男女を問わずカジュアルな接客をするバー、スナック、といった感じの店です。
店により差があると思いますが、私がいた店はバーカウンターとボックス席があり、ママもマスターもいる、接客スタッフに男も女もいる、という店でした。
ある日、店に私の知らない男性が来店しました。
ママが「あら〇〇さんお久しぶり〜!!」とすぐに声をかける。
見たことのない人だったので、てっきり一見さんかと思ったのですが、どうやら私がそこで働き始めるよりだいぶ前に店に来ていた人らしい。
「正宗、〇〇ってタグのボトル持ってきて」
ママから指示を受け、私はキープボトルが入っている棚の奥から〇〇さんのボトルを探し、グラスと氷とお通しを用意して、ママと一緒に接客に付きました。
その時、接客をしながら私は
『なんだろうこの人、分からないけど何かヤバいぞ...』
と思っていました。
雰囲気が異様なんですよ。
その人の周りだけ異様に湿っぽいんです。
何年間も水浸しになっていた地下室の蓋を開けた時のような、重苦しくて淀んだ湿度がその人にまとわりついている感じがするんです。
そして、その人の周りだけ暗い。
空気中の暗さを吸収して、その人の周りだけ暗く歪んで見える感じがします。
店柄、そして場所柄から、お客さんの中には8●3の人や、同性●者の人などもいました。
このような人たちも、服装や話ぶりがごくごく一般的であっても、どこか一般的ではない雰囲気を漂わせることがあります。
しかし、この〇〇さんはそのどちらとも違う。
なんなんだ、この人は...
笑顔だけど、やたらかぼそい声でネガティブなことばかり喋る〇〇さんがしばらくして帰ったあと、言いようのない不可解さにモヤモヤしながらテーブルの後片付けをする私に向かって、ママがボソッとこう言いました。
「〇〇さんねぇ、ヒッ●マンなのよ」
思わずテーブルを片付けていた手が止まった。
「え?」
「頃●屋よ、●し屋」
「は?」
「ひとり■■円で人頃●ちゃうんだって」
バキューン、とママが指で作った銃を撃つ真似をする。
「...マジですか?」
「うん。『ママさんのお願いだったら■円でいいよ〜』って言われたことある。とんでもないとんでもない!」
そう言いながらママは頭を左右に振った。
なるほど、だからか。
私はその話で全てを納得し、テーブルの後片付けを再開した。
※この話はフィクションです。
>>同じ店での以前の記事『【怪談】人影』はこちら