どうも!鼻呼吸の使い手の正宗です。
鬼滅の刃は2020年5月18日発売の週刊少年ジャンプ24号にて最終回を迎えました。
この最終回にて突如、鬼殺隊の面々の子孫や生まれ変わりと思われる人物たちが、平和な現代で学園生活を送ったり、遠くない場所ですれ違ったり触れ合ったりし始めました。
コレを見て「鬼滅の最終回ひどすぎ!おまけの鬼滅学園を本編でやるやつがあるか!!」と唱える少なからぬ人たちによって、鬼滅の刃は各所で炎上状態となってしまいました。
なぜ吾峠呼世晴氏はこのようなラストを用意したのか?
私なりに考えをまとめたので、この記事にて解説しましょう。
まず始めに言うべきことはコレです。
■結論入り口『平和な現代の日常の描写』
注意しなければならないのは、『平和な現代の日常の描写』は結論そのものではなく、結論に至る入り口部分だというところです。
炭治郎たち鬼殺隊の激闘により鬼の総大将である鬼舞辻無惨は敗れ、後の世まで続く平和が訪れました。
その平和な世界を描写したのが最終回な訳ですが、ここで最高に活きてくるのが『鬼殺隊は政府非公認の組織』という、鬼滅の刃の最初期から存在する設定です。
どういうことでしょうか?
■『鬼殺隊は政府非公認の組織』なのはなぜか?その設定の重要性
この設定があることにより、『政府の公式文書には一切の記録は残ってないが、鬼と鬼殺隊はかつてこの日本に確かに実在したのだ』という状況を正当化できるんですね。
この『公的な記録や証拠はないけど、昔あった本当の話だよ』という状況の正当化を行うためには、鬼殺隊は政府公認の組織であってはならないのです。
しかし、鬼や鬼殺隊の実在は、読者にしかそれと分からないような微かな残り香として現代にも伝わっていました。
それが嘘小説とされた善逸伝であり、正体不明の謎の画家愈史郎の存在であり、産屋敷輝利哉の生存であり、竈門家に残された炭治郎の日輪刀や耳飾り、そして炭治郎たちを収めた集合写真だったりした訳です。
これらが鬼や鬼殺隊実在の残り香だと知っているのは、鬼滅の刃の読者である私たちだけです。
鬼滅の刃の世界の住人には知る由もありません。
お分かりでしょうか?
この状況は、実は現実を生きる私たちにもそのまま当てはまるんですね。
■鬼が実在した証拠はない。しかし...
私たちは誰も自分の目で鬼を見たことがないし、鬼が実在したとされる100%確かな証拠もどこにもありません。
にも関わらず、鬼に関する昔話や伝承は日本各地に残されています。
であれば、鬼はかつてこの日本に確かに実在した、とされる残り香が日本のどこかに残されていてもおかしくありません。
ただ、私たちにはそれと分からないだけで...
このような思いに至った鬼滅の刃の読者は、心の奥底で『もしかしたら炭治郎は実在したのかもしれない』というじんわりとした余韻とロマンを味わうのです。
なぜでしょうか?
■炭治郎の実在性
鬼滅の刃の最終話は情報の引き算により成り立っています。
現実の世界では鬼は存在しないにも関わらず、鬼の伝承だけは日本各地に残っている。
だとすれば、ここに唯一足りないピースは『鬼を討ち取った存在』であり、それが炭治郎の実在性を思い起こさせるんですね。
鬼滅の刃の世界から現実世界を引き算すると、読者の心の中に竈門炭治郎の存在が浮かび上がってくる、という訳です。
このように、炭治郎を『もしかしたら実在したかもしれない、より身近な存在』として感じることによって、読者はじんわりとした余韻とロマンを味わうことになるのです。
■結論:鬼滅の刃の最終話の舞台が現代になった理由
作者の吾峠呼世晴氏は、この余韻とロマンを読者に味わってもらうために、最終話の舞台を現代にする必要があったのだと私は思っています。
なぜなら、現実世界と鬼滅の刃の世界が高い精度でリンクしていないと、読者の心の中で情報の引き算が行われないからです。
情報の引き算が行われなければ、炭治郎の存在は読者から遠くなり、結果として読後の余韻とロマンも薄れることになってしまうんですね。
読者に情報の引き算をしてもらうことにより、炭治郎の存在を現実世界に浮かび上がらせる、という逆算的な構成になっていますが、ほぼ唯一と言っていいくらい最終回の現代編でしか輝かない『鬼殺隊は政府非公認の組織』という設定が最初期に出てくるところを見るに、恐らくこの現代編の最終回は最初から構想されていたのだと思われます。
素晴らしいですね。
■おまけ:なぜ鬼滅の刃最終話は炎上したのか?
これはひたすら分母が大きかったためだと思われます。
言ってしまえば『実は炎上などしてない』ということです。
感覚ですが、8.7割くらいの人はあの最終話で満足したけど、1.3割くらいの人には響かなかったんでしょうね。
でも鬼滅の刃の場合、あまりにも人気になり過ぎたため、その1.3割の人数が巨大過ぎたのだと思います。
つまり錯覚です。

>>鬼滅の刃 最終巻 幾星霜を煌めく命
PS:
炭治郎の手のひらが一貫してずっとボロボロなのが好きです。









